5mm以下の尿管結石
5mm以下の結石は自然に尿とともに排出する可能性が高いため、通常内服薬で治療を行います。5mm以下の結石でも激しい痛みの原因となって日常生活に障害が起こったり、腎臓の腫れが著明で結石が長期間排石されないことが疑われる場合にはESWL(体外衝撃波結石破砕術)やTUL(経尿道的尿管結石破砕術)の治療を行って結石を砕き体の外に排出させます。
5mm以上の尿管結石
5mm以上の結石の場合、内服や飲水で自然に尿とともに排出する可能性が低くなるため積極的な治療を開始します。ESWL(体外衝撃波結石破砕術)やTUL(経尿道的結石破砕術)を行って結石を砕き、体の外に排出させます。尿管結石によって尿管が閉塞したまま長期間放置した場合には腎臓の機能低下を引き起こす可能性があります。
10mm以下の腎臓結石
腎結石は通常無症状ですが、結石が移動し痛みを起こす状態である場合には積極的に治療を行います。
15~20mm以上の腎臓結石
ESWLで治療を行う場合には多数の結石破片による尿管の閉塞(ストーンストリート)を予防するため尿管ステント留置術を先に行うことをお勧めします。この処置により感染症のリスク、痛みの軽減をすることができます。この大きさになると1回の治療のみで完治することは難しいため、複数回の治療が必要になることがあります。>特に20mm以上の結石の場合には、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)単独治療では治療効果が低くなります。そのため、刑尿道的結石破砕術(TUL)や経皮的腎結石破砕術(PNL)を第一選択として検討する必要があります。
ストーンストリートのレントゲン画像
尿路結石症に対する治療には以下のような方法があります。
① 内服治療
② 経皮的腎結石破砕術(PNL)
③ 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
④ 経尿道的尿管結石破砕術(TUL)
⑤ 開腹・腹腔鏡手術
⑥ 尿管ステント留置術
それぞれについて以下に説明をします。『尿路結石症の治療法』のタブにそれぞれの治療法の詳しい説明が
ありますのでご参照ください。
なお、当院で行なっている治療は
③体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
④経尿道的尿管結石破砕術(TUL)
⑥経尿道的尿管ステント留置術 です。
一般に結石の大きさがおよそ5㎜以下の尿管結石に対して、排石促進剤や鎮痙剤による治療を行います。尿管内から膀胱内に結石が移動するまでは激しい痛みを伴うため、痛む際には消炎鎮痛剤の座薬を使って緩和する必要があります。飲水量を多くし、尿量を増やすことで結石の排出を促します。結石が出た場合には採取していただいて分析に提出します。
利点:治療費が安価で済みます。
治療による体への負担がありません。
欠点:結石が排出されるまで痛みが続く。
痛みが無くても長期間放置することによって腎臓の機能低下を起こすことがある。
TULと同様、腰椎麻酔や硬膜外麻酔を行ったり、全身麻酔が必要です。超音波を使って脇腹から腎臓に直接、内視鏡を挿入します。
積極的な適応は腎臓内にできた珊瑚状結石など、結石体積が大きい場合です。当院では施行していません。
利点:腎臓内の大きな結石に対して様々な治療の中で効果が高い。
欠点:開腹手術の次に体に負担がかかる治療で、合併症のリスクが
他の治療よりも高い。
衝撃波を発生させる装置を用いて衝撃波のエネルギーを体内の結石に目標を合わせ収束し衝撃波の力で直接、結石を細かく砕く治療法です。衝撃波により砕かれた破片は尿とともに、ゆっくりと体外に排出されます。
国内の外科的治療の約90%がこのESWLで行われていますが、結石がESWL単独治療のみでは治療できないことがあります。この場合には内視鏡手術を積極的に用いて治療することも考慮しています。
当院では、STORZ社 SLX-F2とDornier社 DeltaⅡの二台を採用し、結石の部位や特徴によって使い分けを行っています。
利点:
麻酔の必要がない。
体の外から治療を行うので、手術の中では体にやさしい治療です。
欠点:
結石が固いか大きい場合、一回の治療で必ず砕けるとは限らない。
呼吸による結石の移動や痛み刺激による体動で結石に衝撃波があたる回数が左右され、腎結石症では内視鏡手術に比べ治療効果が下がります。
結石の大きさなどによっては複数回繰り返すことがあります。
レントゲンで見えない石の場合には通常治療できません。(例外があります)
腰椎麻酔(下半身麻酔)を行って、下半身の痛み刺激を脊髄神経のレベルでブロックします。これにより内視鏡を挿入しても痛みを感じない状態を作ります。尿道から内視鏡(尿管鏡)を挿入して結石を直接確認して内視鏡の先端から放出されるエネルギー(衝撃波やレーザー等)で細かく砕きます。
利点:
尿道より手術を行うのでESWLと同様に、お腹に傷はつきません。
直接、内視鏡で結石を確認し治療を行うため、治療効果がESWLよりも傾向にあります。しかし尿管の屈曲など内視鏡が結石に近づけない時には砕石できません。
欠点:
痛みの管理のため必ず麻酔が必要です。また、麻酔を行うため入院が必ず必要です。
尿管に穴があく、尿管が狭くなるなどのESWLには起こらないリスクが生じます。
全身麻酔や腰椎麻酔が必要です。内視鏡手術やESWLの治療が確立された現在ではほとんど第一選択として行われない治療です。特殊な例では適応になりえます。
結石による尿管閉塞に伴って高熱、背部痛が出現することがあります。これは閉塞性腎盂腎炎というもので、閉塞に伴う尿の停滞、細菌尿の排出障害によって抗生剤を行います。
しかし、抗生剤投与などの保存療法のみでは不十分なことがあります。この場合にはESWLなどの結石治療を優先せず、閉塞部位の尿の排出を促します。(感染症がある時点で治療を強行すると感染症が悪化し、敗血症をおこすことがあります)。この処置を行うことによって細菌尿が体外に排出され、感染症が劇的に改善することがあります。
また、結石が1cm以上でESWL時の細かくなった結石の破片が尿管内にすし詰めとなり、結石性腎盂腎炎を引き起こすことがあります。この予防のために尿管ステントを治療前に挿入することがあります。